介護保険制度が始まって、早20年が経とうとしています。
まだ若い人や身近に介護を必要とする人がいない場合、介護保険のことをよくわからない人も多いのではないでしょうか。
日本は先進国の中でも高齢化が急速に進んでいます。
今は介護なんて関係ないと思っていても、いつ自分や身近な家族に介護が必要になるかわかりません。
そこで今回は、介護保険制度の基本を丸ごとお伝えします。
目次
介護保険とは社会全体で高齢者を支える仕組み
介護保険とは、介護を必要とする人が適切なサービスと受けられるよう、社会全体で支え合うことを目的とした国の制度です。
1997年12月に制定、2000年4月から施行されました。
介護保険には以下の3つの基本理念があります。
自立支援:高齢者が自立した生活を送ることができるようにサポートすること
利用者本位:利用者の自主選択によって、自分に合う保健医療サービスと介護サービスを総合的に受けることができる制度
社会保険方式:収めた保険料の金額に応じたサービスや給付金を受けることができる方式
介護保険制度ではこの基本理念のもと、高齢者が人間としての尊厳を保ち、自立した生活を送ることができるよう、社会全体で支えることで介護の充実を目指しています。
介護保険では、地域社会で支える仕組みという意味合いが強いため、運営主体は市町村となっています。
また、介護保険は3年ごとに改定されており、直近では2017年に地域包括ケアシステムの強化のために必要な改定が行われました。
介護保険の対象者は2つに分かれている
介護保険の対象者は40歳以上で日本に住民票がある人です。
介護保険の対象者を被保険者と言います。
この被保険者は年齢によって2つに分かれています。
それぞれについて、細かく確認していきましょう。
第1号被保険者
その市町村の区域内に住所がある65歳以上の人。
介護や介護予防が必要と認定されると介護保険を利用できます。
介護保険料は個人ごとに異なり、基本的には年金から天引きされます。
ただし、天引き対象の年金が年18万円未満の場合には、保険料を直接納付しなくてはいけません。
第2号被保険者
その市町村の区域内に住所がある40歳以上65歳未満で、国民健康保険もしくは医療保険に加入している人。
以下に示す特定疾病が原因となり、介護や介護予防が必要と認定された場合に介護保険を利用できます。
(特定疾病)
筋萎縮性側索硬化症・後縦靭帯骨化症・骨折を伴う骨粗しょう症・多系統萎縮症・初老期における認知症・脊髄小脳変性症・脊柱管狭窄症・早老症・糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症・脳血管疾患・パーキンソン病関連疾患・閉塞性動脈硬化症・関節リウマチ・慢性閉塞性肺疾患・両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症・がん(末期)
介護保険料は、加入している医療保険によって変わります。
国民健康保険の場合は世帯ごとに決定され、国民健康保険と介護保険を合わせた金額を国民健康保険料として世帯主が納めます。
医療保険の場合は、医療保険ごとに設定されている介護保険料率と給与(標準報酬月額)に応じて決定され、医療保険と介護保険料を合算して給与から天引きします。
40~64歳の被扶養者の場合は、保険料を個別に納める必要はありません。
介護保険の利用には要介護認定が必要
介護保険を利用するためには、介護申請を出して要介護認定を受ける必要があります。
介護保険の申請から認定までの流れは以下の通りです。
・被保険者が要介護認定・要介護認定を市町村へ申請する
申請は、家族のほかにも成年後見人や民生員などが代行することができます。
・市町村が認定調査を行い、コンピュータによる推計で一次判定を行う
介護保険認定調査員が自宅等に直接訪問して調査を行います。
調査票は全国統一で、概況調査と基本調査、特記事項の3項目に分かれます。
一次判定では基本調査を使用します。
・二次判定では、介護認定審査会が審査・判定を行う
調査票の特記事項と主治医意見書を元に二次判定が行われます。
・要介護認定(1~5)・要支援認定(1・2)・非該当が決定する
もし、判定に納得できない場合には、判定を知った日から60日以内であれば不服申し立てを行うことができます。
無事に認定が下りると、市町村から介護保険証を発行されます。
介護保険証には名前などの基本的な情報のほかに、介護サービスを受ける上で必要な認定された要介護度や、在宅サービスを受ける時の1カ月の上限額が記載されています。
介護保険で受けられるサービスは4つ
介護保険で受けられるサービスは大きく分けて次の4種類に分かれています。
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
居宅サービス
居宅サービスとは、在宅生活を送るために必要な介護サービスです。
大きく分けると訪問サービスと通所介護、短期入所サービスの3種類があります。
・訪問サービス
介護士や看護師などが居宅を訪問して、介護や療養上の世話などを行うサービスです。
訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導の5つが該当します。
・通所サービス
利用者が通所施設に通い、入浴や食事などの介護やリハビリなどを受けるサービスです。
通所介護・通所リハビリテーションが該当します。
・短期入所サービス
介護保険施設などに短期間入所するサービスです。
介護者の負担軽減や冠婚葬祭などで家を空ける時などに使用されることが多いです。
私の祖母は認知症があったため、自宅で生活している時には訪問介護と通所介護を使っていました。
支援サービス
支援サービスとは、ケアプランを作成するサービスのことです。
この支援サービスは全額介護保険から支給されます。
施設サービス
施設サービスは、都道府県知事の指定を受けた介護保険施設に入所して介護サービスを受けることです。
次の2施設が該当します。
なお、介護療養型医療施設は平成30年3月末をもって廃止することが決定しているため、除外しています。
・特別養護老人ホーム
身体上もしくは精神上の著しい障害のため常時介護が必要な人が入所する施設。
入所定員は30人以上で、原則要介護3以上の人が入所可能です。
入浴や排泄、食事などの介護のほか、機能訓練、健康管理および療養上のお世話が提供されます。
・介護老人保健施設
病状が安定期にある要介護者が入所する施設です。
自宅と病院の中間的立場として位置付けられており、在宅復帰を目指します。
看護および医学的管理課における介護や機能訓練、必要な医療と日常生活上のお世話が提供されます。
私の祖母の認知症が悪化して自宅での生活が難しくなった時には、介護老人保健施設に入所しました。
施設に入所すると生活リズムを整えることができるため、入所してから規則正しい生活になり、持病の糖尿病もコントロールできるようになりました。
地域密着型サービス
地域密着型サービスとは、高齢者が中重度の要介護度になっても可能な限り住み慣れた地域で過ごせるよう、市町村で提供することが適当なサービスのことです。以下の9種類があります。
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・地域密着型特定施設入居者生活介護(30人未満の有料老人ホームなど)
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
私の祖母は、現在は認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に入所しています。
グループホームは認知症の人に特化した自宅に近い雰囲気で過ごせる施設ですので、私の祖母も今では元気だった頃と同じくらいの落ち着きを取り戻すことができました。
介護保険の利用料は基本的に1割負担
介護保険は、介護度によって使えるサービス量が決まっています。
介護度によっては使えないサービスもありますので、使えるかどうかわからない時には担当のケアマネジャーに相談しましょう。
また、介護保険の利用料は基本的に1割負担となります。
ただし、一定以上の所得がある高齢者の場合は、2割負担となっています。
年金額が少ないなどの低所得者へは、負担を軽減する制度もありますので、金銭的に不安な場合でも安心して使える仕組みになっています。
まとめ
介護保険制度と聞くと、複雑で難しいと感じる人も多いでしょう。
しかし、今回紹介したポイントを押さえておけば、いざという時にも慌てなくて済みます。
あなたや周りの人が元気なうちから、介護保険の基本を知ることで、将来の不安を少しでも軽減することも可能になるでしょう。