寝たきりの高齢者の介護と聞くとどんなことを思い浮かべますか?
入浴介助、排泄介助(おむつ交換)、食事介助、更衣介助など生活に関わる介護をイメージする人が多いでしょう。
ですが、その中に歯磨きなどの口腔ケアなどを思い浮かべた人は少ないと思います。
まさか、寝たきりの高齢者ましては、胃ろうや腸ろうなどをしている高齢者には口腔ケアなんて必要がないと思っていませんか?
目次
寝たきりの口腔ケアは高齢者に必要なの?
結論から申し上げますと、寝たきりの高齢者に口腔ケアは必要です。
特に高齢者は唾液の分泌が加齢によって少なくなり、常に口の中が乾燥しがちなため、口腔内に雑菌がたまりやすくなっています。
この雑菌は時間が経つにつれて、臭いを放つので口臭の原因にも。
口臭だからと言って軽く見てはいけません。
口臭が気になって人との関りが億劫になり、そこからコミュニケーション不足に陥って認知症を発症してしまうケースも多々あります。
これは私の経験なのですが、介護士として働いていた際、週1回訪問介護で高齢者の自宅を掃除する仕事がありました。
1時間かけてリビング、台所、トイレ掃除をするのですが、ゴミ捨てをしたのにも関わらず生臭い臭いが残っていることが多々ありました。
注意深く観察すると、高齢者の口臭がかなりきついことが分かり、担当ケアマネに相談。
その方は訪問介護だけでなく、デイサービスも利用していたので、デイサービス先の歯科訪問のサービスを新たに組み込んでもらい、歯の治療をしてもらうことになりました。
結果、口臭も抑えられ生臭い臭いも部屋から無くなりました。
このように口臭によって高齢者自身が「臭い!」と思われてしまうこともあるのです。
また、口臭だけにとどまらず口の中の雑菌が体内に入り、肺炎を起こしてしまう可能性もあります。
高齢者にとって、肺炎は命の危機に関わるほどの重大な病気。
自分の大切な家族が口腔ケアを怠ったばかりに命を落としてしまうなんて、そんな悲しい経験はしたくないですよね。
寝たきりの口腔ケアは誤嚥性肺炎を防ぐ!その手順は?
高齢者の肺炎の原因は様々ですが、その中でも最も多いのが誤嚥による肺炎。
誤嚥と聞くと、食べ物が気管に入ってしまうことによって起こるものなので、寝たきりで胃ろうや腸ろうの高齢者には関係のない話ではないかと思う人もいるのでしょう。
でも、誤嚥性肺炎は唾液の飲み込みや胃液の逆流によっても起こるので、食べ物を口から摂取しなくても発症する可能性があります。
私も過去に寝たきりの高齢者の方の介護を何人も介護してきましたが、多くの人が誤嚥性肺炎によって病院に入院したり、亡くなったりするケースを何度も経験してきました。
誤嚥性肺炎を発症した原因が口腔ケアだけではないことは確かですが、もし早めに口腔ケアをしっかりとして、歯の治療や嚥下機能の衰えを少しでも改善することができていれば救うことができた命もあるのではないかと考えるとやはりやりきれないですよね。
このことから、私は寝たきりの高齢者こそ誤嚥を防ぐために口腔ケアは必要だと考えます。
口臭ケアの手順は以下のようになっています。
では、それぞれの項目を具体的に見ていきましょう。
口腔ケアの手順
1.うがい
寝たきりでもうがいができる人は、ベッドを起こしうがいをしてもらいましょう。
意識障害がある高齢者の場合は、誤嚥を防ぐため軽く湿らせたガーゼやスポンジで口腔内を拭きます。
2.入れ歯の清掃
入れ歯を介助者が外す場合は、必ず手袋をしてから入れ歯を外すようにしましょう。
先程も述べましたが、口腔内には雑菌が多く介助者が入れ歯を外す際に、歯や入れ歯で手を傷つけてしまうとそこから感染症にかかる恐れがあります。
介護者は自分の身を守るためにも口腔ケアの際は、必ず手袋をしましょう。
3.粘膜の清掃
口腔ケアは歯だけを清掃すればいいものではありません。
頬の内側や舌の粘膜の清掃も口腔ケアの1つ。
口腔ケア専用のスポンジブラシや綿棒、ウェットティッシュなどの介護用品を活用して優しく粘膜の汚れをふき取りましょう。
4.歯磨き
全介助が必要な高齢者の歯磨きをする場合、歯ブラシはペンを持つように握ると磨きやすくなります。
歯を磨く際は、力が入りすぎないよう軽くあてる程度に優しく磨きます。
力が入りすぎると歯茎を傷つけてしまい、そこから感染症になる恐れもありますので注意が必要です。
5.うがい
毎日行う口腔ケアには様々な手順がありますね。
口腔ケアの途中で高齢者が不穏になったり、体調が悪くなったりすることもあるかと思います。
その時は無理に進めず、時間をおいて再度口腔ケアを試みましょう。
寝たきりの口腔ケアはプロにも協力要請を!月に1回の歯科訪問を利用しよう
毎日の口腔ケアは家族や介護士でもできますが、入れ歯のメンテナンスや歯の病気などの発見などは素人の私たちにはできません。
特に寝たきりの高齢者の場合、意思疎通ができない方も多く歯が痛くても訴えることができない場合がほとんど。
大切な家族が苦しんでいる姿は見たくないですよね。
口腔内の異常を早期発見するためにも月に1回の歯科訪問を利用することをおすすめします。
でも、歯科訪問となると費用が心配だと思うご家族もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は歯科訪問は介護保険サービスの1つであり、1~2割の自己負担で歯科医師の訪問診療を受けることができます。
私の勤めていた有料老人ホームでも月に1~2回、定期的に歯科訪問を行っており多くの高齢者がサービスを利用していました。
そこで歯周病や虫歯を早期発見してもらうことも多々あり、1人1人に合った口腔ケアの方法を介護スタッフに指導してもらうことも。
歯科訪問後の高齢者の方を見ると、なんだかスッキリしたような表情になっていたのがとても印象的でした。
寝たきりの高齢者の介護となると入浴介助や排泄介助など身体的な介護サービスをイメージしがちですが、口腔ケアも視野に入れて歯科訪問も介護サービスに組み込むことをおすすめします。