老人ホームの食事と聞くと、「病院と同じで栄養バランスは良いけど味はいまいち」と思っている人も多いのではないでしょうか。



実は、最近の老人ホームでは、食事に力を入れているところも増えてきました。



しかし、実際にどんな食事が出されているのか、気になる人も多いでしょう。



そこで今回は、老人ホームの食事の事情についてお伝えします。







老人ホームでは食事は楽しみの1つ







食事は、生きていくうえで欠かすことのできないものです。



しかし、ただ食べられればいいというものでもないのが、食事の難しいところでしょう。



老人ホームでは、個室があると言っても多くの人と生活を共にしなくてはいけません。



施設の種類によっては、自由気ままに外出することができないこともあります。



そのため、自宅で暮らしていた時よりも楽しみが減ったという入居者も決して多くはありません。



そんな入居者の多くが楽しみにしているのが、毎日の食事です。



特に、介護度が高く体を自由に動かすことができない人にとっては、食事は数少ない楽しみの一つになるでしょう。



また、食事中の会話を楽しみにしている入居者も多いです。



私の働いた施設でも、レクリエーションには参加しないものの、食事中に他の方と交流するのを楽しみにしているという人もいました。



行事食やイベント食を実施する老人ホームも増えている




近年、老人ホームでは普段の食事だけでなく、季節に合わせて行事食を実施する施設も増えてきました。



行事食とは、七草がゆなどの季節料理や、ひなまつりなど行事に合わせた食事のことを言います。



行事食を提供することで、少しでも四季を感じてもらうことが目的で行われることが多いでしょう。



また、バイキング形式などの普段の食事とは違った食事形態をイベントに合わせて実施する施設も増えてきています。



行事食やイベント食は、普段とは盛り付けや食べ方が変わるので、普段は食の細い人も思いのほか食べてくれるなどのメリットがあります。



私が働いていた施設でも、普段は1割程度で食事を終えてしまう人が、行事食のお寿司をおかわりするほどたくさん食べられたという事例がありました。







老人ホームの食事には色んな形態がある







老人ホームには、介護度の高い人も多く入居しています。



普通の食事形態ではむせてしまったり、うまく飲み込めないという人も少なくありません。



そこで、老人ホームでは普通の食事が難しい人でも安心して安全に食べられるよう、さまざまな食事形態を用意しています。



多くの施設で用意されている主な食事形態は以下の4つです。



・普通食
・軟菜食
・ソフト食
・ゼリー食



普通食には説明はいらないと思いますので、軟菜食・ソフト食・ゼリー食の3つについて詳しく見ていきましょう。



軟菜食




軟菜食とは、普通食と同じ食材を柔らかくして食べやすくしたものです。



歯がない人でも無理なく美味しく食べられ、見た目も普通食と変わりません。



ソフト食




ソフト食とは、軟菜食をすりつぶしたうえでとろみ剤等を使用して形を整えた食事です。



軟菜食よりも柔らかく、飲み込みもしやすいので、軟菜食ではむせてしまう人も安心して食べることができます。



見た目もできるだけ普通食に近づけるよう工夫されており、多くのソフト食が普通食とそん色ない見た目となっています。



ゼリー食




ゼリー食とは、普通食や軟菜食をミキサーにかけた後、ゼラチンなどでゼリー状に固めた食事です。



口の中でばらけにくく、喉をつるんと通ることができるので、噛む力がない人や飲み込みが悪くむせが多い人でも食べやすくなっています。



できるだけ美味しく食べてもらえるよう、固さだけでなく食感などにも工夫がされています。






また、最初にむせが見られるのは飲み物や汁物などの水分であることが多く、その場合にはまずとろみ調整剤を使用して様子を見ます。



私の働いていた病院や施設でも、むせが見られた時にはまずとろみ調整剤を使うよう指導されていました。



老人ホームの食事は今や施設選択の重要ポイント







毎日美味しい食事を食べたいという思いは、高齢者だけでなく全ての人が思うことでしょう。



全国有料老人ホーム協会では、ホーム選びのチェックリストを参考までに公開しており、このリストには「食事サービス」の項目も入っています。



それほど、食事というのは入居する高齢者にとっても、その家族にとっても重要な項目となってきたと言えるでしょう。



そのため、老人ホームでも食事には力を入れるところが増えてきており、毎日の献立を公開している施設も出てきています。



老人ホームの食事が「味はいまいち」という時代は終わりました。



今や老人ホームの食事は美味しいだけでなく、毎日の生活を彩る楽しみの一つとなっています。



ですから、老人ホームを選ぶときには、ぜひ食事についてもしっかり確認してください。



そうすれば、入居者とその家族の両方が納得した状態で施設を選ぶことができ、老後の生活を豊かに送れることでしょう。