介護労働安定センターの調査結果と介護離職ゼロに向けた対策案


介護4年目の主夫一郎です。



介護労働者による介護離職問題に取り組んでいる組織として、介護労働安定センターがあります。



同センターは介護労働実態調査の結果を毎年公表して問題点をまとめておりますが、この調査結果は考えさせられます。



特に安倍総理が掲げた『介護離職ゼロ』目標を本当に実現させることを考えた場合、介護のお仕事をしている人によるサポートは欠かすことができませんが、この調査結果からは、大変厳しい現実が見えてきます。



そこで今回の記事では、介護労働安定センターの役割と実態調査結果についてポイントを解説し、介護離職ゼロを実現するために、今後、どんな施策、どんな行動が求められていくのか考えていきたいと思います。







公益財団法人介護労働安定センターとは?




公益財団法人介護労働安定センターとは?


同センターWebサイトの説明によると、



・介護労働者の雇用管理の改善、能力の開発・向上、その他の福祉の向上を図るための総合的支援



・介護事業者を含む介護分野全般に対する支援



の大きく2つの目的があります。



介護労働安定センターの設立の趣旨
(引用画像;介護労働安定センター・トップページhttps://www.kaigo-center.or.jp/center/index.html)



ここでいう、『介護労働者』とは、主に介護職に従ずる人を指しています。



介護労働安定センターの主目的は、『介護を仕事とする人』の能力と処遇を改善することで、日本全体の介護サポート力の底上げを図ることであり、安倍総理の目標である『介護離職ゼロ』(介護と仕事を両立させている『一般のビジネスパーソン』が、介護を理由に離職する数を0にする)に対しては、間接的に果たしてく組織といえます。



なお、この「介護離職ゼロ」については、現場を経験した私としては、極めて大変ハードルの高い目標だと感じておりますが、1mmでも目標に近づくためには、という視点で私の意見を提言しており、介護離職ゼロ問題への理解が深まるきっかけになるかもしれません。



介護労働安定センターの活動内容は、介護と仕事を両立させている社員を雇用している企業の労務担当者等を対象とした、従業員の管理方法や関連資格に関するセミナーを定期的に開催したり、介護労働者や介護の仕事に就いている人の離職率やその理由などの実態調査を行っています。



また、『支部』という形で、都道府県ごとに拠点が設置されており、地域密着型であることが特徴です。



厚生労働省からの天下りされる方が多い機関ではありますが、逆に、厚生労働省で百戦錬磨してきた専門家が多数在籍しているため、いざと言うときに、的確なアドバイスがもらえる頼れる組織と言えそうです。



実際に介護離職した私が、介護労働安定センターに今後も強力に進めていただきたいと感じる施策は、ハローワークとの連携による採用活動全般の進行です。



後述しますが、介護離職をゼロにする事は無理に近い現状があります。それを鑑み、まずは地に足のついた施策として、私のように介護離職をした人が、地元で再就職しやすい環境が整っていることで、介護離職ゼロが無理にせよ、その代替手段として機能すると思うのです。



また、介護を仕事としている人が、より長くやりがいをもって働くことは、介護サービスの質・量の拡大につながり、日本全体の介護力UPにつながる、彼らに対するキャリア形成や、教育訓練の機会を増やす活動も、積極的に進めてほしいと願っています。







介護労働実態調査結果からみえてくる介護離職ゼロへの影響は?




介護労働実態調査結果から介護離職ゼロを考えた


介護労働安定センターは、年1回、介護労働実態調査を実施しています。



詳細は以下のPDFに資料としてまとまっておりますので、あわせてご確認をいただければと思います。



平成26年度「介護労働実態調査」の結果



その結果のまとめは、以下の通りです。



・介護を仕事にしている人の離職率は16.5%(平成25年10月1日~平成26年9月30日)

・介護を仕事にしている従業員の過不足状況は、不足感59.3%で、その理由は採用が困難72.2%

・介護を仕事にしている人の採用が困難の原因は、賃金が低いが 61.3%、仕事がきついが49.3%

・介護の仕事を選んだ理由は、働きがいのある仕事だと思ったからが52.6%

・介護を仕事にしている人自身が、家族の介護を両立できるかどうかについては、34.2%が両立でき、63.3%が両立できない



要は、



介護の仕事はやりがいある一方、給料水準が低いことから採用に至らず人手不足が慢性化、給料の割りに負荷が高く、離職率も悪化、おまけに自身の親の介護の両立すらも困難



という、厳しい現状が見えてきます。



このままでは、深刻な人手不足が進む一方で、さらに高齢化も進むため、介護サービスの需給バランスがさらに崩れることは、誰しもが容易に想像できます。



強い使命感をもった志のある介護ヘルパーさんは業界全体の一部に過ぎず、日本全体において介護サービスが行き届きにくいこのような現状において、介護離職ゼロの実現は、『無理!』と断言したくなるほど、極めて高いハードルと言わざるを得ません。



介護を仕事とする人の観点から介護離職ゼロを実現するためには、兎にも角にも、まずは何らかの形で介護を仕事とする人の処遇改善を行い、能力の高い人材を確保できる環境を整えて(ゼロ目標を掲げた以上、国の重要政策として予算投下すべき)、かつ、ロボットなどを活用した業務プロセスの効率の改善(少ない人手で、効率よく介護サービスが行き届くための仕組みや技術)が必要ではないかと考えています。



これらに加えて、介護と仕事を両立させている社員を雇用している企業の、両立しやすい職場環境の整備も欠かせず、こちらも国として十分な予算を投下すべきと考えます。



最後までお読み下さり、ありがとうございました。