老人ホームへの入居を考えた時、一番気になるのが入居に必要な費用です。
最初に払う金額はどれくらいなのか、毎月どれくらい支払うのか、不安に思う人が多いでしょう。
特に月々の年金のみで生活している人にとっては、いざという時に施設に入居することができるのか、心配な人も多いですよね。
実は、老人ホームの費用は施設の種類によって大きく変わります。
そこで今回は、老人ホームの施設別に必要になる費用の相場と、年金生活でも入居可能かどうかについてお伝えします。
目次
老人ホームの費用は施設によって入居金の金額が変わる
老人ホームは大きく分けると以下の5種類あります。
・介護保険施設
・有料老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅
・グループホーム
・ケアハウス
施設によって必要になる費用には違いがあります。
例えば、入居する際に払う入居一時金は有料老人ホームでは1億円以上必要になるところもありますが、介護保険施設での入居では必要ありません。
月々に必要な金額にも大きな差があるため、入居の際には経済状況に合わせた施設選びが大切と言えます。
それでは、必要な費用を施設別に見ていきましょう。
老人ホームの費用が最も安いのは介護保険施設
介護保険施設とは、介護保険法に基づいて設置されている入居施設です。
現在入居可能な施設は、常に介護が必要な高齢者が入居する「特別養護老人ホーム」と、病状は安定期にあるものの自宅での生活が難しい人が入居する「介護老人保健施設」の2種類あります。
介護保険施設に入所する場合は、初期費用は必要ありません。
介護保険施設で必要になる費用は、毎月請求される「介護サービス費」と「生活費」の2つです。
「介護サービス費」とは、基本的な介護サービスと生活援助のために必要な月々の費用で、介護保険が適用されます。
おむつ代もこの介護サービス費に含まれています。
「生活費」には、居住費と食費、理美容代などの日常生活に関わる費用が該当します。
居住費は個室か相部屋かによって大きく差が見られます。
以下の表にあるように、同じ個室でもユニット型と従来型では金額が変わるので、介護保険施設に入所する時には個室かどうかだけでなく、ユニット型かどうかも確認しておきましょう。
【引用元:厚生労働省「介護老人福祉施設(参考資料)」】
介護サービス費と生活費を合計した入居費用月額の相場は以下のようになります。
ユニット型個室:約12万円
ユニット型準個室:約11万円
従来型個室:約9万円
多床室:約8万円
また、施設が提供しているサービス内容によっては、介護サービスの加算対象となるため、利用料が上がります。
この加算分は介護サービス費と同様に、利用者が1割負担しなくてはなりません。
特に、介護老人保健施設は在宅復帰を目指す施設であるため、リハビリや医療に関する加算がなされることが多く、利用者の状態やリハビリの内容によっては特別養護老人ホームより割高になることがあるでしょう。
なお、介護療養型医療施設も介護保険施設の1つですが、平成30年度末をもって廃止されるため、ここでは説明を省きました。
有料老人ホームは費用が最も高い
有料老人ホームは、高齢者が暮らしやすい「住まい」に、食事や介護の提供と家事援助、そして健康管理などの日常生活を送るうえで必要なサービスを付けた施設です。
民間の企業や社会福祉法人が運営しています。
入居には、入居一時金と月額利用料が必要です。
入居一時金とは、そのホームで終身にわたって生活する権利を取得するために入居時に払う費用のことをいいます。
入居一時金は施設によってばらつきが大きく、保証金や敷金・礼金が必要な場合や、一時金が合計で1億円以上かかることもあるでしょう。
月額利用料には、家賃や水道光熱費、食費など日常生活に関わる費用と、介護サービスを利用した際の介護保険1割負担分が必要です。
追加の介護・生活支援サービス費やおむつ代などは自己負担となります。
家賃相当額は施設によって差があるものの、平均すると10万円程度、食費は約6万円となっており、このほかに介護サービス費や光熱費等を合わせるとおおむね20万円以上が必要です。
老人ホームの月額費用に幅があるサービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅とは、マンションのように独立した住居に安否確認や生活相談などのサービスが付いた施設です。
このサービスには食事の提供や介護サービスは含まれていません。
しかし、多くの施設で食事の提供が行われており、その場合は月々決められた食費を別途支払う必要があります。
また、介護サービスを利用したい場合は、住宅の運営主体もしくは別の介護事業者と契約しなくてはいけません。
サービス付き高齢者向け住宅の契約は、一般の住宅契約と同じく賃貸借契約となります。
入居時に必要となる費用は、敷金・礼金と前払い家賃です。
敷金は家賃の2カ月分もしくは3カ月分というところが多いでしょう。
月々に必要な費用は、家賃や共益費と食費の他に、安否確認と生活相談のサービスに対する費用が必要です。
最も差が出る家賃は、地域や部屋の広さなどによって差があります。
例えば、東京では約5万円~約90万円となっており、経済状況や好みなど、個人に合わせた選択が可能と言えるでしょう。
老人ホームの費用がやや安く認知症の人のみが入居可能なグループホーム
グループホームは、認知症を患う高齢者が専門スタッフの援助を受けながら共同生活を送る場です。
5~9人の少人数で家庭に近い雰囲気が特徴です。
地域密着型の介護施設であるため、基本的にはグループホームのある地方自治体の住民でなければ入居することができません。
また、65歳以上で医師から認知症の診断を受けた要支援2以上である必要があります。
私の祖母は認知症で要介護1でしたので、入居することができました。
グループホームにかかる費用は、初期費用と月額利用料があります。
初期費用には、入居一時金や保証金などの名目で発生する費用です。
初期費用が掛からない施設もあり、高いところで約40万円ほどかかります。
月額利用料には、家賃や食費などのほかに、介護サービス費と医療費や理美容代、おむつ代が必要です。
介護サービス費は地域によって基準額に差があり、東京都江東区では以下のようになっています。
【引用元:江東区「介護保険 認知症高齢者グループホーム 利用者負担の目安」】
実際に必要になる費用は、入居したい施設に直接確認しましょう。
老人ホームの費用が抑えられるケアハウス
ケアハウスは、低額の料金で高齢者が最低限の生活援助を受けながら生活する施設です。
身寄りがない人や家族との同居が難しい人のうち、独立して生活をすることに不安がある人が対象となります。
運営主体は社会福祉法人や医療法人で、国や自治体からの運営補助金を受けて経営しているため、公的側面が強い施設と言えるでしょう。
初期費用は施設によって差がありますが、0円~数百万円と有料老人ホームに比べ安くなっています。
月額の利用料は所得によって決められており、所得が低いほど利用料も安くなります。
老人ホームの中では最も費用を抑えることができるため、入居希望者が多くすぐに入ることはまず難しいでしょう。
老人ホームの費用の支払いが不安な時には負担の軽減措置制度を活用しよう
老人ホームの費用は、決して安いものではありません。
入居した時には何とか払えた費用も、途中から支払いに不安を抱えることもあるでしょう。
そこで活用したいのが、負担額の軽減措置制度です。軽減措置制度には以下の3種類があります。
介護保険負担限度額の認定
介護保険負担限度額の認定とは、介護保険施設に入居している人のうち、所得が低い人に対し居住費と食費の自己負担額の上限を決めることで、負担を軽減する制度です。
各地方自治体に申請をして、認定証が届くと利用することができます。
私の祖母も介護保険負担限度額の認定を受けているため、支払額を抑えることができました。
介護保険負担限度額は所得により上限額は3段階に分かれています。居住費と食費の軽減額は以下の通りです。
【引用元:西宮市「利用者負担段階及び一日当たりの負担額」】
高額介護サービス費制度
高額介護サービス費制度とは、月々の介護サービス費の自己負担額が所得に応じて決められた上限額を超えた場合に、超えた分を払い戻す制度です。
あくまで介護サービス費の自己負担額に対する軽減制度であるため、居住費や食費、日常生活に関わる費用は対象となりません。
高額医療・高額介護合算制度
高額医療・高額介護合算制度とは、8月から翌年7月までの1年間に使った医療保険と介護保険の両方を合わせた額が高額だった場合に、所得に応じた限度額を超えた分を払い戻す制度です。
所得における限度基準額は以下の通りです。
【引用元:全国健康保険協会 健康ガイド「高額療養費・高額介護合算療養費」】
老人ホームの費用は年金生活者でも支払うことができる
年金だけで生活している人が入居できるかどうかは、年金額や預貯金がどの程度かによって違います。
有料老人ホームのように入居時にまとまったお金が必要な場合には、預貯金がなければ入居は難しいでしょう。
しかし、ある程度年金をもらっている人であれば、入居費用の安い施設であれば入居も可能です。
年金額が低い場合でも老人ホームへの入居を諦めてはいけません。
年金額が低く施設入所自体が難しい場合でも、生活保護を受給することで入居できる場合もあるからです。
私の祖母の年金額はとても低かったため、当初は施設入所が難しいと思われていましたが、生活保護を申請したことですんなりと入所することができました。
生活保護の場合は、老人ホームの部屋代が住宅扶助費を越えなければ入居ができますし、介護サービス費は介護扶助費から支払われます。
つまり、年金生活者でも老人ホームの費用を支払うことは可能と言えるでしょう。
まとめ
老人ホームの入居に関わる費用は、施設によって大きな差があります。
老人ホームへの入所の際は、身体状況だけでなく将来的な経済状況も考えたうえで、施設を選ぶことが大切です。
老人ホームの入居の際には費用もしっかりと確認し、介護する側される側の両方が安心した生活を送れるようにしましょう。