老人ホームにはたくさんの種類があります。
それぞれの老人ホームには特徴があり、入居できる条件も違います。
しかし、現場で働いている介護職でも老人ホームの種類別の特徴や入居条件が理解できている人は少ないでしょう。
そこで今回は、老人ホームの種類と特徴を徹底解説していきます。
目次
老人ホームの種類の中でも人気が高い「介護保険施設」
介護保険施設とは、介護保険サービスの1つである「施設サービス」で利用できる公的施設のことです。
介護保険施設には、「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」の3種類があります。
この3つのうち「介護療養型医療施設」は平成30年3月に廃止が決定していますので、ここでは「特別養護老人ホーム」と「介護老人保健施設」の2つを詳しく見ていきましょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームとは、入所している要介護者に対して、入浴や食事、排泄などの介護と各種レクリエーションなどを提供する施設です。
正式には「介護老人福祉施設」と言います。
1986年の老人福祉法改正に基づいて制度化された施設で、多床室と呼ばれる相部屋が中心の従来型が主流でした。
しかし、平成14年にユニットケアが制度化されてからは、特別養護老人ホームでもユニットケア化が進み、平成28年度には全体の36.7%でユニットケアが実施されています。
【引用元:厚生労働省平成28年度介護サービス施設・事業所調査の概況】
特別養護老人ホームに入居できるのは、病気や障害などにより在宅での生活を送ることが困難な要介護度3以上の人となっています。
入居期間に制限はないため、終身利用することができます。
ただし、医師の配置や看護師の夜勤常駐は義務ではないことから、高度な医療ケアが必要になった場合には退所しなくてはなりません。
しかし、痰の吸引や経管栄養の管理については、平成24年より研修を修了した介護職であれば行えるようになるなど、少しずつですが医療面が充実するようになってきています。
介護老人保健施設
介護老人保健施設とは、入院の必要がなく病状が安定している要介護者入所できる施設です。
病院と自宅の中間的施設として位置付けられているため、在宅復帰を目標にしたリハビリを中心とした生活を送ることができます。
また、医師の常駐が義務付けられているので、医療ケアや緊急時の対応ができるところも特徴の一つと言えるでしょう。
入所することができるのは、原則65歳以上で要介護度1以上の人です。
あくまでも在宅復帰を目的にした施設であるため、入所期間は3カ月から6カ月、長くても1年弱と短く、検討会議で退所可能と判断された場合には退所しなくてはなりません。
私の祖母が最初に入所した施設も介護老人保健施設だったため、3カ月間しか入所することができませんでした。
老人ホームの種類の中で多様性があるのは「有料老人ホーム」
有料老人ホームとは、施設に入所している利用者に対して、日常生活を送るうえで必要な介護や生活援助などのサービスを提供し快適に過ごしてもらうための施設です。
有料老人ホームは、施設によって受け入れる高齢者や提供するサービス、施設の設備が大きく違います。
そのため、入居する人の介護度や経済状況に合わせた施設選びが可能と言えるでしょう。
有料老人ホームは、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類に分けることができます。
それぞれについて細かく見ていきましょう。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは、介護が必要になった時には介護スタッフから介護サービスの提供を受けることができる施設のことです。
介護付き有料老人ホームには次の3種類があります。
介護専用型
介護専用型とは、介護などのサービスが付いた高齢者向けの施設です。
介護保険制度の特定施設入居者生活介護の指定を受けています。
入居者は要介護者で、入浴や排泄などの介護サービスや生活支援などのサービスを施設内の介護スタッフから受けることができます。
混合型
混合型とは、介護専用型と同じく介護などのサービスが付いた施設です。
要介護者と健常者の両方を受け入れています。
介護が必要な場合には主に施設内のスタッフが対応します。
外部サービス利用型
外部サービス利用型とは、生活支援などのサービスが付いた高齢者向けの施設です。
介護が必要になった場合には外部事業者によるサービスを利用します。
私が働いていた通所リハビリにも、有料老人ホームから通われる方もいらっしゃいました。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームとは、生活支援などのサービスが付いた高齢者向けの施設です。
介護が必要な人と自立した生活を送れる人の両方が入居しています。
食事の提供は受けることができますが、その他のサービスについては施設内の職員から受けることができません。
そのため、介護サービスや生活支援サービスを受けたい時には、外部事業者によるサービスを利用します。
介護サービス費の自己負担分は在宅の時と同じ原則1割となっています。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームとは、自立した高齢者のみを対象にした施設です。
食事の提供を受けることができるほか、元気な方の暮らしを楽しむのための設備が充実しています。
ただし、介護が必要になった場合には退所しなくてはいけません。
近年は減少傾向にあります。
老人ホームの種類の中でも自由度が高い「サービス付き高齢者向け住宅」
サービス付き高齢者向け住宅とは、安否確認サービスと生活相談サービスが付いている高齢者向けの居住施設です。
マンションのように独立した住居で暮らすことができます。
一般の賃貸物件に比べて入居条件があまり厳しくないため、自宅からの住み替えがしやすいでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅の最大の特徴は、外出や外泊に制限がないことです。
生活の自由度が高く、自宅で生活していた時と変わらない生活を送れます。
入居は、自立している人だけでなく軽度の介護が必要な人も入居でき、介護が必要な場合には外部の事業者と契約することで介護サービスを利用することも可能です。
ただし、介護レベルが高くなった場合には住み続けることが難しくなるため、退去を求められることもあるでしょう。
老人ホームの種類の中で認知症に特化している「グループホーム」
グループホームとは、正式には「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれる地域密着型サービスの1つです。
65歳以上の比較的症状が軽い要支援2以上の認知症患者が、家庭に近い環境でそれぞれの能力に応じて料理や掃除などの役割を持ちながら、自立した生活を送ります。
グループホームでは、認知症ケアができる介護スタッフが常駐しているため、認知症でも安心して生活を送ることができるでしょう。
しかし、1ユニット5~9人と少人数であるため、申し込んでもすぐに入所できるとは限りません。
また、ある程度は自立した日常生活を送る必要があるため、介護度が上がると退所しなくてはいけないこともあるでしょう。
さらに、地域密着型サービスであるため、入居を希望する施設の市町村に住民票がなければ入居することはできません。
私の祖母が現在入居しているのがグループホームです。
入所当初は慣れない場所ということもあり、徘徊などの症状も見られましたが、専門的なケアを受けることで現在では穏やかに生活を送ることができています。
老人ホームの種類の中でも費用が低額なのが「軽費老人ホーム」
軽費老人ホームとは、自立して生活を送るには不安がある身寄りのない人や、家族からの援助を受けることができない人が低額の費用で入居できる施設です。
軽費老人ホームには、A型・B型・ケアハウスの3種類がありますが、1990年以降A型・B型は新設されていません。
それでは、それぞれの特徴について見ていきましょう。
A型(給食付き)
食事などのサービスが付いた高齢者向けの施設です。
介護が必要になった場合には退去しなくてはいけません。
また、所得制限があるため、月収が34万円以上の場合には入居対象外となります。
B型(自炊型)
食事の提供はないため、自炊ができる人が入居する施設です。
A型と同様に、介護が必要になった場合には退去する必要があります。
また、所得制限についてもA型と同様の条件となっています。
ケアハウス
ケアハウスでは食事の提供に加え、生活支援サービスを受けることができます。
また、居室は基本個室となっており、介護が必要になった場合には必要なサービスを受けることも可能です。
ケアハウスには次の2種類があります。
一般(自立)型
生活支援などのサービスが付いた施設です。
自立した生活を送れる人が中心ですが、軽度の介助が必要になった場合にも外部の介護サービスを受けながら住み続けることができます。
ただし、要介護3以上になると住み続けるのは難しくなると言えるでしょう。
介護型
介護などのサービスが付いた施設で、介護保険法の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けています。介護度が上がっても施設のスタッフからの介護サービスを受けることができます。
ただし、施設の数は足りておらず希望してすぐに入所することは難しい状況であると言えるでしょう。
老人ホームの種類の中でも自立した生活困窮者が対象である「養護老人ホーム」
養護老人ホームとは、環境や経済的理由から自宅での生活が困難になった人を、地方自治体が措置が必要と判断した場合に入居できる公的施設です。
措置制度による入所が基本であるため、介護保険の契約による入所はできません。
入居できるのは原則65歳以上で自立した生活が送れる人であり、介護度が高い人は対象外となります。
2005年の介護保険改正により外部サービスを利用することが認められたため、介護保険の居宅サービスを受けることができるようになりました。
ただし、養護老人ホームの定員数や施設数は少なく、入居条件もハードルが高いこともあることから、本当に困った時に利用する最後の砦とも言われています。
まとめ
老人ホームにはたくさんの種類があり、利用しようとする人の身体的状況や精神面、経済状況などに合わせて施設を選ぶことができるようになっています。
在宅の生活が難しいと感じた時には、早めにケアマネジャーや地方自治体の窓口などに相談してください。
早めに相談しておけば、ゆっくり時間をかけて自分に合う施設を選ぶこともできることでしょう。