近年、ライフスタイルの変化や価値観の多様化から、今まで選ばれてきた「盛大なお葬式」ではなく、家族葬などの小規模な葬儀スタイルが多く選ばれる様になってきました。
様々な業種からの葬儀業界への参入を機に、不透明だった葬儀に関する情報がインターネットやマスコミから簡単に手に入る様になった事で、自分で自分の葬儀について考える方が増えてきたのも理由と言えます。
日本消費者協会が発表した「葬儀に関するアンケート」では、葬儀費用の全国平均相場は約200万円です。
まだまだ高額な日本の葬儀費用ですが、皆さんは何故これだけの費用がかかっているのかご存知ですか?
「出来るだけ安くすませたい!」というあなたの為に、葬儀形式や宗教、地域差から補助金制度まであらゆる角度から安くする条件をお教えします!
目次
葬儀が安い条件まとめ!
葬儀を安く済ませるには様々な方法がありますが、その知識があるのとないのとでは費用と満足度に大きな差が生まれます。
その為には、どういった葬儀をしたいのか?人数はどれくらいで、どんな会場で行うのか?など、ある程度は考えておく事が必要だと思います。
最近の終活ブームで話題となった「エンディングノート」を使われるのもおすすめです。
ではどんな方法があるのか実際に考えてみましょう。
3つの葬儀形式で徹底比較!
葬儀費用とは「葬儀にかかる費用」「飲食・接待費用」「寺院への御布施等」を全て合計したものです。
ではそれぞれの費用が葬儀形式によってどう違いがあるのかお話しましょう。
・一般葬
親族だけではなく、故人と生前ご縁のあった方々を広くお呼びして通夜・葬儀を行うスタイルです。
一般葬というと豪華なお葬式というイメージがあるかもしれませんが、実は幅広い価格に対応出来るのが一般葬のメリットです。
一般的な平均価格は80~200万+御布施です。
「葬儀にかかる費用」はお棺や祭壇などグレードを選べるものが多く含まれるので、選択によっては質素にも豪華にも出来る事を覚えておかれると良いと思います。
「飲食・接待費用」は見積では概算として計上されています。
会葬者が予想より多いと返礼品や飲食費に追加料金が発生する場合もありますが、見積の段階で故人の友人や仕事関係などのお付き合いを考えながらある程度の予想を立てておけば、大幅な価格変更はありません。
「寺院への御布施等」は、普通はどのくらい渡すものなのか?初めて葬儀をする時には全く予想がつかないものですよね。
御布施の相場は約15~30万前後ですが、寺院や地域によっても差がありますし、お寺とのつきあいの深さによっても違います。
葬儀社に聞いてみると大体の相場は教えて貰えますので、不安な場合は事前に聞いておきましょう。
ちなみに御布施は僧侶の人数分必要になりますので、何人も来られる場合はその分金額は上がります。
また会葬者からの香典収入で葬儀費用をある程度賄えるのも、忘れてはいけない一般葬のメリットです。
お友達が多かったり、まだ若く仕事関係のお付き合いがあった故人であれば、一般葬を選ばれるのが良いと思います。
・家族葬
葬儀に呼ぶ人を限定し、故人と近しい人のみで行うお葬式です。
参列者が限られますので、「飲食・接待費用」がかなり抑えられるのが特徴です。
費用は約40~60万+御布施が一般的でしょう。
周りに気を遣わずにゆっくりとお別れが出来るというメリットがあり、最近広く受け入れられるようになってきました。
反対にデメリットとして、香典収入がほとんどないので、費用のほとんどは遺族が負担します。
また後から訃報を知った方が「お参りさせて欲しい」と続々と弔問に来られて、応対や返礼品の準備などに追われてしまう事もあります。
先日、たまたま家族葬をされた隣の家の方から「隣の誰かが亡くなられた様なんだけど、連絡もないし・・・ご自宅へお参りに行くべきか、知らないふりをするべきか困っている」と相談のお電話を頂きましたが、こんな風にご近所さんに気を遣わせてしまっては申し訳ないですよね。
そういったトラブルを避ける為にも、ご近所や親しい方には故人が亡くなった事、家族葬で見送る事、香典や供物は辞退する旨を事前に伝えておかれると良いと思います。
・直葬
通夜・葬儀を行わず火葬のみを行う直葬が近年増加しています。
直葬は「飲食・接待費用」「寺院への御布施」が必要ありません。
「葬儀にかかる費用」も亡くなってから火葬する為の最低限のものになるので3つの葬儀スタイルの中では最も安く出来るという事になります。
直葬を選ぶ理由は家庭によって様々ですが、私がいる葬儀社では金銭的な理由からの割合がとても多い様に感じます。
費用は地域によっても違いますが10~20万程度で行う事が可能ですし、最近は色んな葬儀社から直葬プランなども出ていますので見積を比較してみると良いでしょう。
しかし、直葬は親族の中でも理解を得にくく、後々トラブルになりやすいというデメリットもありますので、安いという事だけに重点をおかずに慎重に決める事が大切だと思います。
3つの宗教の違いで徹底比較!
日本には様々な宗教がありますが、宗教によって費用の違いはあるのでしょうか?
ここでは仏式・神式・キリスト教をそれぞれ比較してみたいと思います。
・仏式
日本で行われている葬儀のほとんどが仏式です。
仏式では僧侶がお経を唱えて故人の冥福を祈り、仏様の弟子になった証として戒名(法名)を授かります。
僧侶には御布施と戒名(法名)料を渡しますが、場合によっては御車代などが必要になる場合もあります。
御布施の相場は10~30万、戒名料は宗派や戒名のランクによって10~100万円と金額には大きな差があります。
また、仏式では葬儀後の法要がたくさんあり、49日法要までは7日ごとに自宅でお経をあげて頂きますが、その際にも御布施が必要です。
何かと寺院関連での出費が多くなるのが仏式の特徴と言えます。
・神式
神式の葬儀の事は神葬祭と言います。
神社の神職が祝詞を唱え、故人の御霊をその家の守り神とする儀式です。
仏式とは故人に対する葬儀の意味合いがちょっと違いますよね。
神式では御布施ではなく神社に「玉串料」を納めますが、相場は30~50万円で、戒名料はありません。
戒名(法名)料もないので、神式は安いという印象を持たれると思いますが、実は祭壇にお供えするものや玉串など意外と準備しなければいけないものが多く、仏式とそれほど差がないのが実情です。
また、遺族だけではなく神職の考え方も葬儀に大きく影響しますので、どういった葬儀をしたいのか前もってお話されておくとトラブルを防ぐ事が出来ると思います。
・キリスト教
キリスト教は祭壇料や戒名料、飲食費が必要ないので、仏式に比べると葬儀費用が半額~3分の1程度に抑える事が可能です。
費用は40~100万円が一般的でしょう。
49日などの法要がありませんので、葬儀後にかかる費用も抑えられるメリットがあります。
お棺、ドライアイス、火葬料金など最低限のものは仏式と同じですが、その他は教会へ納める献金、飲食費、牧師やオルガン奏者への御礼、会場使用料などが必要になります。
ただ教会への献金は任意の額ですし、会場使用料などは必要のない教会もあります。
信者の方々がボランティアで葬儀のお手伝いをしてくれる事も費用を抑えられる大きな理由ではないでしょうか。
注意しなければならないのは、キリスト教では基本的に信者であることが条件です。
日曜礼拝やミサなどへの時間的拘束があったり、教会への定例献金も必要なので、ただ安いからといって安易にキリスト教の門をたたくのはおすすめ出来ません。
キリスト教に少しでも興味をお持ちの場合は、近所の教会などへ出向いて牧師様と相談されると良いと思います。
安い地域と高い地域を徹底比較!
お葬式にはその地域によって様々なしきたりや風習があり、自分の知っているお葬式とは全然違っていて戸惑ってしまった方も多いのではないでしょうか?
平成26年に発表された「葬儀についてのアンケート調査」では、都道府県別の葬儀費用の平均で1番高いのが関東地方で237万円、安いのが四国地方の134万円と、なんと約100万円の差がありました。
地域によって金額の差が出やすいのが通夜ぶるまい等の飲食・接待費用です。
お通夜の後にお酒やオードブルなどをふるまう「通夜ぶるまい」は、関東地方では供養の意味も込めて一般参列者にも声をかけます。
通夜ぶるまいが親族だけの地域に比べると、飲食・接待費用の面でも関東地方が高いのは納得できるところですよね。
今までの伝統やしきたりを受け継いでいくのも大切ですが、時代が変われば葬儀も変わってくるものです。
節約してもよい所といけない所をよく考えた上でプランを考えてみましょう。
葬儀の補助金制度とは?
意外と知られていないのがこの補助金制度です。
葬儀を行うと、故人が加入していた健康保険や社会保険から葬祭費(埋葬費)が支給されます。
申告してから口座に振り込まれるまでの期間は地域によって違いますので、申告した時に確認しておかれると良いでしょう。
ただし申告制なので、言わないと支給されません。
葬儀が終わった後は心身共に疲れ果てるものです・・・そんな時でも様々な手続きが遺族には待ち受けています。
気がついた時には遅かった・・・なんて事がないように、しっかり覚えておきましょう。
・国民健康保険・後期高齢者医療制度
国民健康保険や後期高齢者医療に加入していた本人やその扶養家族が亡くなった場合に「葬祭費」が支給されます。
支給額は30,000円~70,000円と自治体によって差がありますが、東京23区は一律70,000円、大阪府は一律50,000円です。
申請期間は2年間です。
・社会保険(業務外)
加入者本人(退職後3ヶ月以内の方も含みます)が業務外で亡くなった場合は、その加入者によって生計を維持されていた喪主に「埋葬料」として支給されます。
生計を維持されていた家族がいない場合は喪主に「埋葬費」として一律50,000円支給されます。
また、加入者の扶養家族が亡くなった場合にも、「家族埋葬料」として一律50,000円が支給されます。
こちらも申請期間は亡くなった日から2年間です。
・社会保険(業務上)
加入者本人が業務上で亡くなった場合は労働者災害保険より喪主に「葬祭料」が支給されます。
支給額は315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額です。
・生活保護受給者
生活保護受給者の場合は「葬祭扶助制度」が適用されます。
支給額は大人が201,000円、子供が160,800円が上限で、通夜・葬儀はなく火葬だけを行います。
また、生活保護受給者以外の親族が葬儀を執り行う場合には対象とはなりませんので注意が必要です。
格安葬儀のメリット・デメリットについて!
最近ではインターネットで葬儀を依頼する格安葬儀が話題ですよね。
インターネットで葬儀を選ぶなんて一昔前では考えられなかった事ですが、地域の繋がりが希薄になり近くに相談出来る親族や知り合いがいない方にとっては、とても便利なシステムだと思います。
ではネットで選ぶ格安葬儀は本当に安いのか?メリット・デメリットを考えてみましょう。
メリット
デメリット
これまで様々な角度から葬儀費用を安くする方法をお話してきましたが、あなたのお役に立てる情報はありましたか?
時間的に余裕がある場合はネットの格安葬儀はもちろん、地元密着の葬儀社にも見積をしてもらいましょう。
事情によっては支払いを少し待ってもらえたり、希望の金額の範囲内で色々な工夫をしてくれたりと融通が利くのも地元密着の葬儀社の強みでもありますので、一度相談されてみてはいかがでしょうか?
また小規模なお葬式を求める声が高まる一方で、注意しなくてはならないのが低価格にこだわりすぎるとサービスの質がどうしても落ちてしまうという事です。
大切な家族を亡くして精神的に辛い時に、心のこもったサービスがあれば癒やされる場合もありますし、せっかくお参りに来て下さった方々へのサービスをケチってしまっては失礼に当たります。
そういった事も踏まえて、心と費用両方で満足できる葬儀を考えてみられると良いでしょう。