訃報の連絡はいつも突然で、驚きとともに悲しみが押し寄せてきます。



故人の葬儀が近くで行われるのであればすぐに駆けつけることができますが、遠方で行われる場合、葬儀に参列するのが難しいことも。



そんなときは、お悔みの気持ちを込めた供花(きょうか)を贈るのはいかがでしょうか。



贈られた花は祭壇や斎場の入り口を飾り、故人との別れの儀式をより荘厳なものにします。



ですが、供花を贈る際のマナーを守らないと遺族に迷惑がかかることも。



そうならないためにも、今回は葬儀で花を贈る方法やマナーについてご紹介します。







葬儀で花を送る―供花の意味とは?








葬儀で故人に花を贈ることを供花(きょうか・くげ)と言います。



供花には故人のご冥福を祈る気持ちをこめて花を供えることで、霊を慰めるという意味を持っています。



供花は、故人のご冥福を祈りたいという気持ちがあれば誰でも贈ることができます。



なお、キリスト教の葬儀のように祭壇に花を添えたり、故人の棺に花を手向けたりするのは供花ではなく献花になりますので、間違えないようにしましょう。



供花は2つセット(1対)で贈るのがマナーだとされていたこともありましたが、最近では1つ(1基)で贈ることも増えてきています。



後ほど紹介しますが、宗教の種類や葬儀場の規模によって供花の種類は違います。



マナー違反にならないよう、しっかりと確認しておきましょう。




葬儀で花を送るときに気を付けたいマナー







まずは供花の贈り方を確認しましょう。



1.供花を贈りたい旨を遺族に連絡して了承をもらう
2.遺族の了解を得た後、葬儀社に供花の依頼
3.葬儀社より故人の葬儀の規模、予算を聞いて供花を決める
4.支払いを行う



近年、よくある供花のトラブルの1つに葬儀に参列できないため遺族に了解を得ずに香典の代わりに供花を贈り、遺族から辞退されたというケースがあります。



辞退の理由は、「故人の意向によるもの」として決して悪意はないのですが、故人を偲ぶために贈った供花がかえって迷惑になることもあるのです。



なので、供花を贈る際は必ず遺族の了解を得るようにしましょう。



また、供花を葬儀社既定のものではなく、自分で選んで贈りたいという人も中にはいるでしょう。



ですが、葬儀社によっては他社で手配した花を受付けないケースもあります。



また、自分で供花を手配できたとしても、祭壇や斎場の雰囲気に合わず飾るのが難しくなってしまうことも。



私の曾祖母の葬儀の時にも供花についてちょっとしたトラブルがありました。



曾祖母は長年農業を営んでいたこともあり、隣近所とのつながりが強く葬儀では多くの参列者が曾祖母の死を悼みに来られました。



ですが、中には都合が合わず葬儀に参列できない人も。



このような人が何人かいて、遺族の私たちの承諾を得ないまま、豪華な供花を贈ってきました。



遺族としてもありがたいことですが、あまりにも豪華で香典返しをするのが大変だったと後日曾祖父がつぶやいていました。



このように故人のために贈った供花がかえって遺族の負担になることもあるので、供花を贈る際は必ず遺族に連絡しましょう。



また、供花を葬儀社以外で手配しようと考えている場合は、葬儀社に以下のことを確認するとトラブルを避けることができますよ。



・葬儀の規模や種類(一般葬か家族葬か)
・外部で手配した供花を飾ることができるか
・葬儀場の花と統一感を出すためにどんな花の種類が適しているか



故人を穏やかな気持ちで贈りだすためにも、供花を贈る際のマナーには気を付けましょう。







葬儀の花の種類は宗教によって変わる







日本で一般的に行われているのは仏教の葬儀ですが、故人の信仰している宗教によっては、神道やキリスト教の葬儀が行われることもあります。



宗教によって葬儀の形式が異なるように、供花も宗教によって花の種類や飾る場所などが異なります



一般的には、葬儀社から供花を贈ることが多いので、マナー違反になることはないのですが、問題は自分で手配した供花を贈る場合



どの宗教で葬儀が行われるかによって贈る供花の種類が違いますので、マナー違反にならないようここでしっかりと確認しましょう。


仏教




仏教の葬儀で供花を贈る場合、どのような葬儀会場でも利用しやすいよう「籠盛り」にしたフラワーアレンジメントを贈るのが一般的です。



また、葬儀の規模が大きい場合はフラワースタンドを贈ることもあります。



どちらの供花を贈るべきか悩んだときは、葬儀社に連絡し相談すると良いでしょう。



供花に使用する花は基本的に生花で、菊・カーネーション・ユリ・デンファレが一般的で高級感を出すために胡蝶蘭を飾ることも。



色は白をベースに落ち着いた雰囲気のものを選びます。



最近では、生花に代わってブリザードフラワーや造花を贈ることもあります。



供花ではないのですが、私の曾祖母の葬儀の打ち合わせでも祭壇の花を生花にするか造花にするかを葬儀担当者から相談されました。



遺族間で話し合った結果、曾祖母の葬儀には値段が高い生花を飾ることに。



それは生前、曾祖母が自宅の庭で花をたくさん育てて愛でていたことが大きな理由です。



このように供花も生前の故人を思い浮かべながら選ぶといいかもしれませんね。



ちなみにもし私が亡くなったら、葬儀の花は造花にしてもらいたいと思います。



できるだけ家族の負担がないようにしてもらうのが私の意向です。



神道




神葬祭での供花の贈り方は仏教の場合とほぼ同じになります。



以前は、榊を贈ることも多かったのですが、近年では喪主である祭主が榊を供え、それ以外の遺族や参列者は花を供えることが一般的です。



供花の花の種類も仏教と同じですが、神葬祭では胡蝶蘭は飾らないので贈る際は注意しましょう。



キリスト教(カトリック)




キリスト教の場合、スタンドフラワーや花輪を供花として用いることはないのでご注意ください。



また、供花の意味も異なり、故人の慰めではなく遺族への慰めとして贈ります



そのため、遺族が供花を辞退することもあるので、供花を贈る際は必ず遺族に連絡をしましょう。



供花の花は、造花は用いずに全て生花で籠盛のフラワーアレンジメントを贈ります。



また、贈り先も葬儀場や教会ではなく個人の自宅に贈るのがマナー



供花の花の種類は、洋花が中心で菊を用いることはありません。



また、供花の色のベースは基本的に白ですが、他の色の花を使っても問題ないとされています。



葬儀の花―供花の相場







供花の贈り方やマナーについて確認したところで、実際に供花を依頼する場合、費用はいくらになるのでしょうか。



供花の費用は、葬儀社や供花を専門に扱う業者によって違いますが、安いもので5,000円、花輪やスタンドフラワーになると20,000~30,000円になります。



また、供花をした場合は香典は不要になりますが、両方送ってもマナー違反にはなりません。



ですが、遺族の香典返しを考えると供花か香典のどちらか1つを贈った方がいいかもしれません。



私の曾祖母の葬儀では、香典と供花の両方を贈る人が多く、祖父母が香典返しに悩んでいました。



なお、供花をもらっても遺族はお返ししなくてもマナー違反にはなりません。



ですが、故人のためを思って贈ってくれた花なので、お返しが何もないのも遺族として気を遣いますよね。



なので、供花を贈る際は高価なものは贈らないほうがかえって遺族が気を使わなくて済むかもしれません。



供花に使う費用については、葬儀の規模や生前の故人とのつながりを考慮すると決めやすいかもしれませんね。